2022/04/26 18:45

こんにちは。

詩集「凍える言葉」を販売し始めてから、そろそろ1週間が経とうとしています。

すでに、四十冊が読者の元へと旅立っていきました。まさかここまで売れるとは思っていませんでした。
もちろん、目標はずっと高いところにあるわけではありますが。

私は、詩集を作ると決めた時、印刷会社もどこにするか決めていました。
その印刷会社とは「精興社」です。精興社には独自の書体があり、「精興社書体」と呼ばれています。

精興社書体は、出版界隈では知る人ぞ知る書体です。「細長く、美しい、そして読みやすい」、これが精興社書体の特徴です。
この文字の印象は、当然活字職人である「君塚樹石」の手によるところがかなり大きい。
その一方で、精興社の創業者である白井赫太郎の働きぶりも書体の名声を高めることに寄与しているのではないかと思います。
岩波書店との深い関わりを決定づけるエピソードとして、活版印刷の時代、出版された書籍の一部に印刷不良があったようで、白井は神田界隈の書店を周り、ほとんどの書籍を買い占めたようです。

また、精興社書体の美しさを印象付けるエピソードに「活字の一回使用」があります。今からかなり昔、活版印刷所は活字屋さんから活字を購入していたようです。活字は金属でできていました。つまり、当時文字は物体だったのです。
物体であるからには摩耗します。その摩耗が原因で、美しい印刷が妨げられることがあったのです。それを回避するために、白井は「活字の一回使用」を行いました。一度作った精興社書体を、溶かして再び作り直していたのです。そうすることで、印刷物のクオリティを維持したのでした。


創業者の人柄、天才活字職人、革新的なソリューション、これら三つの要素が重なったことで、精興社書体の価値が大きく高まったのです。

しかし、私はこのような輝かしい精興社の実績だけから仕事を依頼するに至ったわけではありません。
次回、決め手となった精興社と青梅の関係についてお話ししたいと思います。